挨拶に代えて

 夜空を見上げ、星座の世界や望遠鏡で見る遥か彼方の銀河の姿に心躍らせた子供のころ-
 やがてその興味は北極星の下にある、極北の世界にも向けられていきました。

  -アラスカやカナダ北極圏を犬橇を駆って旅をした植村直己さんの冒険、
  -高校時代に出逢った新田次郎の小説「アラスカ物語」の世界、
  -あるいは未知の北西航路に挑んだアムンゼンの航海やナンセン率いるフラム号の探検-

 北極圏に関する書物を紐解くたびに、まだ見ぬオーロラの不思議な輝きに想いを馳せ、
 エスキモーやインディアンの暮らし、そして厳しい自然の中で生きる野生動物の姿に限りない
 興味を抱いてきました。 

 学生時代、導かれるように手にしたジム・ブランデンバーグの写真集「White Wolf」では、過酷
 な自然を相手にする写真家という職業人の仕事を目の当たりにし、その作品世界に圧倒された
 ことを憶えています。

 この世界に美しい場所はそれこそ数え切れない程あるはずなのに、なぜ自分の中では極北の地
 -その中でも特に「最後の開拓地」と呼ばれたアラスカという土地の存在が次第に大きくなっていっ
 たのか、その答えをずっと探しに行きたいと願っていたように思います。 

  子供の頃、雪と氷と岩しかない不毛の地、というイメージしかなかった「辺境のフロンティア」-

 時を経てようやく訪れた憧れの大地は、自分の予想を遥かに超えた豊かで美しい場所でした。
 ときには厳しい自然の洗礼を受けることもありますが、アラスカの大地はいつもそれ以上のものを
 僕に与えてくれます。

 「Northward」というギャラリーの名前には、こうした自分自身の「北志向」の想いを託しました。 
 まだ始まったばかりの、終わりのない旅の途中で出会った風景や野生動物の姿をここでご紹介
 していきたいと思います。

                                              2006/07/07 蝶野研二